鍋に煮物におでんの具…日々我々が口にしている食べ物「こんにゃく」。
スーパーに行けば必ず見かける存在ですが、実は、旬が存在するんです。
在来のこんにゃく芋でのこんにゃく造りに挑戦する、大島屋蒟蒻店さんに潜入。
リアルなこんにゃく作りの現場をリポートします!
■大島屋蒟蒻店について
大島屋蒟蒻店さんは、白河市にある、創業約200年の歴史ある蒟蒻屋さん。店主の吉島家は、江戸時代に藩主から「大島屋」の屋号を授かり、今に至るまでその看板を守ってきた。
現在は、7代目のお父さんと、8代目である娘の佳津恵さんと祐輔さんご夫妻の3人でこんにゃくやところてん等を作られている。
(HPより)
■まずはこんにゃく芋を知ろう
こちらが生のこんにゃく芋。大島屋さんは矢祭町の在来種の芋を生産者さんから買い上げて、こんにゃくを作っている。こんにゃく芋は、収穫までに3年、植え替えをしながら育てるというから、この時点で大変な苦労がかかっている。収穫時期は冬の間だけ。本来こんにゃくは、この時期にしか食べられなかったもので、旬が確かにあったのです。
※生で食べると、毒です。
■作り方を学ぼう!皮剥き〜摺り下ろし
工場に移って、芋から蒟蒻が出来るまでを見学します。
まずは、芋の皮を剥いてカット。
次に、水の中に芋を摺り下ろします。寒い中でも、全て手作業。
水の中で時間が経つと、灰汁が上に浮き、プルプルの元であるマンナンやそれ以外の成分が下に溜まっていきます。ここで灰汁を分離できるので、食べる時のアク抜きは必要ありません。
※まだ、口に入れたら毒です。
■温める
こんにゃくの素が適度な固さになるまで集まったら
灰汁と水を取り除いて、ボウル越しに火にかけます。
少し水分量を減らして、24~26度くらいまで温めます。
この作業をしないと、食べられない原因であるシュウ酸カルシウムを中和するための石灰分がうまく混ざらず、食べられなくなってしまいます。仕上がると、少し表面にツヤと隙間があるように見えます。
※これでも、まだ食べられません。
■バタ練り
温めたこんにゃくの素を、四角い箱の中に入れます。これは、中に蒟蒻を練る羽がついた「バタ練機」。混ぜることで温度を均一にするだけでなく、 気泡含ませることで味が染みやすく弾力が出るようになります。お湯を加えて固さをコントロールしながら練っていきます。
※残念ながらまだ食べられません。
■そして完成へ
練り終わったこんにゃくの素を、石灰水と合わせて完成させていきます。そこで登場するのが、伝統の「花上式」の機械。素と石灰水を合わせて押し出してくれる、昭和初期からの凄腕のマシーンです。
どんどんと押し出されたこんにゃくは、熱湯のプールに次々と浮かべられていきます。
そのまま熱湯で一晩加熱して、反応しきることで、ようやく完成を迎えます。
出来たばかりは黄色い色をしている。仕上がると最初のように白っぽくなる。
■なぜこんな大変な作業を…。理由をインタビューしてみよう
–なぜ、在来の芋でのこんにゃく作りをはじめたのですか?
(HPより)
そもそも本来こんにゃくは、割と最近まで芋から作られていました。6代目の頃までは生芋だけだったのですが、先代に変わる頃に、こんにゃく粉を作る技術が生まれました。
それにより、どんな時期でも、効率よくこんにゃく作りが出来るようになって、今の低価格化、大量生産が可能になったんです。
僕たちが戻ってきて継いでから、段々とこの作り方だけでやっていくことに疑問を持つようになってきた時に丁度、新聞で在来のこんにゃく芋を守っている農家さんが隣町にいるのを発見したんです。今の日本では、1つの品種がこんにゃく芋の生産量の97%を占めているので、本当に希少なものなんです。
―まさに天の配剤。
(HPより)
すぐにコンタクトを取って、会いにいきました。農家さんは、文化を守るために、病気に弱くて儲からないものでも続けていらっしゃって。最初は買い叩かれるのでは?と心配されていたので、先方の言い値で買うことに決めました。それだけ、価値を認めていかないと、もっと衰退していってしまうので。
―なるほど。生芋からの製法は、かつてのレシピを使っているのですか?
いえ、生芋からの作り方は、7代目も子供の頃見ていた程度だったので、親子2代で、記憶や資料を探りながら、0からもう一度試行錯誤していきました。農家さんとも意見を交換しながらやっと辿り着いたのが、今の製法です。
-7代目と8代目で作り上げた、伝統と革新の商品と言えますね。通常のこんにゃくとは、どんなところに違いがあるのでしょうか?
生芋を使うと、製粉から作る際には失われてしまう、セラミドがそのまま残ります。化粧品や美容液などに配合されていることが多い栄養素です。ほかにも、生芋から作ったならではの素朴な旨味や芋の風味が残っているので、出汁に浮かべるだけで美味しく感じることができます。
―希少な原料、というだけではない確かな魅力があるんですね!
見学するまで、全く知らなかったこんにゃくの真の姿。あなたも一度、本物のこんにゃくを味わってみませんか?