9月26日(土)、福島市に新しくマイクロブルワリーが誕生します。その名もYellowBeerWorks。今回は、開店に先駆けて行われた、オープニングイベントの様子とともに、この新しいふくしまの食の拠点ができるまでの道のりをご紹介します。
■浜通り・中通り・会津が一体となったビール作り。
ブルワリーは福島駅から車で北西に20分ほど行ったところ、飯坂温泉の近く、大笹生という地区にあります。何を隠そうこのブルワリーは、以前にチームふくしまプライドでも取材をした夫婦米農家、カトウファームが立ち上げました。(当時のインタビューはこちら。)
取材以降も、単独での海外催事出店や、Global G.A.P.の取得など数々の挑戦を成し遂げてきた加藤夫妻。ビール作りのきっかけは、南相馬の農地を耕すことから始まりました。浜通りに位置する南相馬市は、避難指示が解除されたものの、耕作を再開する人材が課題に。2018年から縁あって農業をすることになった夫妻は、仲間であるコリーファームの佐藤忠保さんらと共に何を作るか考えます。会津などとは違い、雪が積もりづらいことから麦に着目した彼らは大麦栽培に着手。福島の海はかつてサーファーで賑わった海でもあり、そのイメージからビールをイメージし、そのままホップ栽培にも取り組み始めました。「当初は委託醸造を考えていた、」と専務の加藤絵美さんは話しますが、そこは挑戦のカトウファーム。翌年、醸造所を設立することを決意します。都内でのビールづくりの修行や、各地のクラフトビールを学び、着々と準備を進めていきました。
そんな中、2019年10月に福島を新たな災害が襲います。全国的に風水害をもたらした台風19号は福島各地にも爪痕を残し、浜通り南部にあるいわき市も夏井川の氾濫により住宅や農地に大きな被害を受けました。同市のファーム白石の白石長利さんも、自宅と農地が浸水。その年の野菜の収穫が絶望的になっただけでなく、水路の修繕が見通せないため、来季の米作りに不安を抱えていた白石さんは、加藤さんに連絡を取ります。
「うちの田んぼに、絵美ちゃんとこの麦撒けないかな?」思いがけない相談。ですが、この上ないタイミングでした。
「明後日ちょうど南相馬に植え付けに行くから、終わり次第行くよ!」その言葉通り、日暮れにいわきに現れた三人は、真っ暗な中で大麦を撒きます。会津と福島。そこから南相馬、いわき。日本で3番目に大きい福島の全域が繋がって、誕生の日へと進んでいったのです。
■人と縁に囲まれたビールの誕生
9月20日(日)、穏やかな秋空の下でレセプションパーティが行われました。いわきから白石さんや、カトウファームにホップ株を譲った縁のある、NPO法人イシノマキ・ファーム(宮城県石巻市)の高橋代表らも集まり、記念すべき一口目。木幡福島市長の発声で乾杯です。
ブランドのロゴと同じタッチで描かれたのぼりは、「黄色」つながりで縁ができたアメリカ在住の日本人アーティストPeelander-Yellowさんのデザイン。Tシャツなどのアパレルも目を引きます。
喜びを語る晃司さん。
現在タップで展開されているビールは「zaso IPA」「マーレIPA」,県産ホップや大麦、米を使用した「fukushima sounds」の3種類。アメリカスタイルを意識しているというビールは、柑橘を思わせる爽やかな香りです。
最後は福島を拠点に活動するシンガーで、なんとカトウファーム の社員でもあるAveさんによる一曲で大団円を迎えました。
これから、福島の食のコミュニティの中心としての場所になると確信できるオープニングでした。