【開催レポート】ふくしまおいしくnight☆~みゆきとみずきの幸せお届けMarch~

よみもの

ふくしまおいしくnight☆
~みゆきとみずきの幸せお届けMarch~

三週間かけて福島県内をめぐってきたがわたしたちが、各地で集めてきたおいしいものを料理して参加者のみなさまと食べる。

そんなおいしくてわくわくするイベントが、3月11日の夜、郡山のコワーキングスペース「福島コトひらく」にて開かれました。
ポップには小さく、「アシスタント中田智之シェフ(※)」の文字が。
シェフをアシスタントにする「みゆきとみずき」とはいったい何者なのか、このイベントでいったいどんな幸せがお届けされたのか…。気になりますね。

ということで。主催者のひとりであるみゆきと一緒に、このおいしいもの探しの旅とそのゴールを、のぞいてみましょう。

 

(※中田智之シェフ・・・東京、山形での修行を経て、2014年、郡山市にオープンした地産地消レストラン「ブランコ フクケッチァーノ」の料理長に就任。地産地消を大切にし、2017年からは地元の食材を使ったレシピ開発や食育教室など、料理を通じた地域活動を展開するアツいシェフ。)


わたしたちは三週間かけてふくしま中を旅し、おいしいごはんのもとをつくっている生産者さんにもお会いしてきました。
そのなかで、

ぜひそのストーリーをみなさまにも知っていただきたい!
そのおいしい食材たちに込められた愛情や情熱を感じながら、お料理を味わって感動していただきたい!

という強い思いがありました。

ただ食べてもらうだけじゃつまらない。このおいしいものたちひとつひとつにまつわる物語を、まずはお届けしよう。

というわけで、みなさんお腹がすいているところですがすこーしだけお時間をいただいて。
まずは、わたしたちの自己紹介もふくめてこの旅がはじまったところからのおはなし。


主催者のひとりであるわたし、吉川みゆきは、心のこもった母の手料理のおかげか、子どものころから食べるのが大好きでした。岐阜で生まれて栃木の大学へ進学し、そこで海外の所得格差や価値観の違いとともに、日本の地方のまちづくりにも関心を持つようになりました。
将来や就職について悩んでいた時、ふくしまの食や生産者の魅力を伝えるため精力的に活動している方とお会いし刺激を受け、わたしもふくしまへ行ってみたい!と思うようになりました。

 

もうひとりの主催者、みずきこと東瑞季も、幼いころから食べることが大好き。スーパーの特売チラシを見て買い物に行ったり、家族の分までお弁当をつくったりする日々。
大学では地域でのボランティア活動にも興味を持ち、食が地域にもたらす可能性について興味を持ちます。
今回は、ふくしまの食とその生産者さんたちの声をききたい、との思いから、ふくしまへやってきました。

 

これで、「みゆきとみずき」とはいったい何者なのか、という謎は解けましたね。
自己紹介はこのくらいにして、いよいよおいしいもの探しの旅の記録へレッツゴー!

まず、おいしい食事に欠かせないのはおいしいお酒!
ということで、郡山と会津坂下へ、伝統ある酒蔵さんを訪れテイスティングや酒蔵見学をしました。

お酒の次はおつまみ!
そこで、最近日本全国で注目が高まっている、とっても甘くておいしいねぎをつくっている会津若松の農家さんのもとへ、農作業のお手伝いへ行ったり、

相馬で行われた、ふくしまの生産者さんの勉強会へ参加し、漁師さんのお話を聞いたり、

郡山ブランド野菜を作っているスーパー農家さんにお会いしたり。

こうして、会津、中通り、浜通りと、福島県の各地でおいしい食材を集めてきました!

これはあくまでもほんの一部で、ほかにもさまざまな生産者さんにお会いし、お話を伺い、実際につくっている食材をいただいたりして、わたしたちが感じたこと。

それは、自分のしごとへのプライド。そして手間暇かけてつくった食材への愛情でした。

どうすればもっとおいしくなるだろう。
どうすればもっと良いものをお客さまにお届けできるだろう。

そんな真摯な思いから、何度も何度も重ねた試行錯誤の末できあがった食材たちは、生産者さんの愛そのものでした。

伝統を受け継ぎながらも、時代に合わせ、自分の色を出し、新しいチャレンジと改良を続けることでうまれた食材たちは、生産者さんの努力そのものでした。

なによりも、目をきらきらさせながら、農業は楽しい、漁師が好きだ、と語る生産者さんたちは、心の底から生き生きしていて、ものすごくかっこよかった。

自分たちがふだん何気なくいただいている食材たちには、こんなに素敵なストーリーがあったんだ。

わたしたちが毎日おいしいごはんを食べることができているのは、いやもっと言えば、今もこうして健康に生きていられるのは、こうやってたゆまぬ努力を続けながらおいしいものをつくり続けてくれている生産者さんたちのおかげなんだ。

そんな大切なことに気づけた三週間。その記録と思いを、イベントに来てくださったみなさまと共有したところで。そしてそれぞれの場所でゲットしてきた食材たちの説明をし、今日のディナーへの期待が最高潮に高まったところで。

待ちに待った、ごはんタイム!

 

 

わたしたちが出会ったおいしいものたちの絵と、手作りのふくしまおいしいものマップで彩られた素敵なお部屋のテーブルに、中田シェフという最強のアシスタントとわたしたちがつくったお料理の数々がずらり。


使っている食材やその産地がわかるように、ポップも手作りしました。
すべての料理に、わたしたちがふくしま各地でゲットしてきた、思い入れのある食材たちが使われています。

そして今回はオリジナルのスパイスとして、わたしのふるさと岐阜と、みずきのふるさと京都の食材や郷土料理も加えてみました。

ふくしまの生産者さんたちが丹精込めて作った食材たち。
岐阜でとれたジビエや、肉厚なしいたけ。
京都の伝統的なお漬物。
これらの魅力を最大限に引き出して、中田シェフのアシストの もとつくったお料理。

会場のあちこちで、

野菜ってこんなに甘いものなんだ!

ニンジンは子供のころから苦手だったけど、これならおいしい。

ふくしまの日本酒って本当に飲みやすくて、たくさん飲んじゃう!

しいたけがおいしくて肉厚で、これ岐阜から取り寄せたいくらいだね!

といった嬉しい声がたくさん聞こえてきました。

 

 

 

 

会場がいい具合に温まってきたところで、スペシャル企画!

ふくしまの地産地消を代表する料理人、中田シェフの公開インタビュー!

今回は、ふくしまの食材を使った料理にこだわり、生産者さんとのつながりをとっても大切にしている中田シェフから、ふくしまの食にかける熱い思いを聞かせていただこう!というのが目的。

まず、中田シェフの食材へのこだわりを聞くところから。

食材は顔の見える生産者さん、そしてプライドを持ってやっている生産者さんから買うようにしているという中田シェフ。
東京のレストランで使っていた野菜たちと比べると、ふくしまの野菜たちはとっても味が濃いんだそうです。

と、ここで。インタビューに慣れていないわたしたちは、公開インタビューという緊張のせいもあり、開始早々何も言えなくなってしまい…。

しーんという沈黙に、頭が真っ白になっていたところを、中田シェフに助けていただいてしまいました。

「みなさんは、なぜふくしまにきたんですか?」
という中田シェフの質問から、インタビューではなくセッションが始まるという、まさかの展開に。

うまくインタビューが進められず申し訳ない限りでしたが、そんなこんなで、わたしたちと中田シェフのセッションタイムがスタート。中田シェフとともに、ふくしまの食と自分の思いについて語らせていただきました。

 

 

吉川;わたしにとって、相手の体調や好みなどを考えて料理を作る、という行為は愛そのものなんです。食と人にかかわる何かがしたいなと思っていた時、ふくしまで食と生産者さんの魅力を全国へ発信する活動をしている(チームふくしまプライド。事務局の)小笠原さんと出会いました。その出会いをきっかけに、食が生み出すコミュニケーションや、生産者さんの顔が見える関係に惹かれ、ふくしまでなら自分のやりたいことがやれそうだと感じ、これまでは縁がなかったふくしまへと来ることに決めました。

東;わたしは地域の中に埋もれているおいしいものってたくさんあるんじゃないのかなと以前から思っていまして。食と地域について学びたいと思っていたんです。小笠原さんの影響もあり、ふくしまで生産者さんに実際に会ってお話を聞いてみたい、との思いから、ここへ来ました。

 

と、ここで。

もうひとり今ふくしまでわたしたちと一緒に活動している東京の学生、大野木君の参戦。
彼もやはり小笠原さんとの出会いがきっかけ。ふくしまという場所よりは、食への関心からふくしまへ来ました。

大野木;僕は幼いころ卵アレルギーだったこともあり、食への興味は強く、食べられることの幸せを日々感じています。また、ごはんは会話のきっかけにもなることから、一緒にごはんを食べることでその場の人との出会いや新しい発見が生まれるような場づくりをしたい。食と人とをつなげたい、という思いをもってふくしまへ来ました。

中田;なるほどね。こうやって震災後ふくしまに若い人が来てくれるのは本当にうれしいですね。地域のつながりも震災前より濃くなったんじゃないかな。震災がなかったら、今日この場もこの出会いもなかったわけですしね。
で、実際ふくしまに来てみて、どうだった?

吉川;まず一番の変化は、ふくしまへ来て日本酒が大好きになったことですね(笑)。
というのは冗談で。わたしはここへ震災のボランティアとしてきたわけではないのですが、生産者さんとお話をしていると、当然震災の話は出てきます。やっと軌道に乗り始めたところで震災が起きたという方も多くいました。けれどわたしがお話を伺った方々は、震災を理由に文句を言うのではなく、確かに被害は大きかったけど、学ぶこともあったと。震災をきっかけにそれを乗り越えようと、家族や仲間のきずなが深まった、今は震災前より売り上げは伸びている、という方もいらっしゃったんですね。そのお話を聞いて、わたし本当にびっくりしたんです。被災地のイメージって正直やっぱりあまり良いものではなかったのですが、震災を乗り越え、あれもひとつの良いきっかけでもあったと語る生産者さんの姿を見て、本当に強くてかっこいいなと思いました。試行錯誤して一生懸命やってきたからこそ今があるんだなって。

東;やっぱり、強い思いやこだわりを持っている生産者さんて本当にかっこいいですよね。私もそれはすごく感じました。

中田;生産者さんかっこいいですよね。僕も一時期就農しようか考えたことがあるんですけど。実際試してみたら、やっぱりまさに畑違いでした(笑)。自家菜園はしてるんだけど、農家って大変な仕事でもあるよね。
でも生産者かっこいいって言ってもらえるのは、うれしいですね。
大野木君は、どうだった?

大野木;僕は関西出身で、被災地からすごく遠かったから、震災にも正直そんなに目を向けることがなかったんです。何も知らないからこそ、ただ漠然と被災地は怖いようなイメージで。でも、ここへ来てイメージは変わりました。食べるものはすべておいしくて、出会う方々は魅力的。
僕、ふくしまの浜通りで行われたスタディーツアーに参加させていただいたんですけど。震災でゼロからのスタートになったこの地で、何か新しいことやってやるぞ!てわくわくしてる人達がたくさんいて。これからのふくしまおもしろそうだな、こういうところで自分も何かやりたいって思いました。
ここへ来る前の僕みたいに、被災地のこと何もわからなくて、何となく怖いとしか思ってない人ってたくさんいると思う。そういう人へ向けて、僕から少しでも情報発信ができたらなと思っています。

中田;そうですね、被災地は遠かったと。なにがなんだかわからない、そんな中情報だけが交錯して、危ないという気持ちだけが高まっていたんですね。
僕が以前働いていたレストランにいたとき、年に三回ほど香港から来てくれるお客さんがいたんです。仲良くしていたんだけど、震災後初めて彼らが来るとき、彼らは絶対にふくしまのものは食べないと決めて来ていたんですね。危ないからって。でも、そんな彼らがふくしまをまわって生産者に会ってきた。そしたら、「生産者の人たちかっこよかった。もらった食べものも食べたし、しかもすごくおいしかった」って。
そうやって外の人にふくしまの魅力を届けるためにも、人とのつながりって本当に大切。僕らはまだ、点と点がつながった状態で、細い線でしかない。みんなが勇気を出して、そこから寄り添わないとだめなんじゃないかって思うんです。

 

 

ここで中田シェフは、ご自分が以前お世話になった奥田シェフのお話をしてくれました。奥田シェフは、十年以上前に未登録の農薬を使ったことで、農家が最悪の状態に陥っていた山形県鶴岡市を食の都にしようと立ち上がったシェフ。その結果今ではそこが日本で唯一の食文化土地としてユネスコから選ばれています。

中田;奥田シェフのしたことは本当にすごいこと。これを僕は今やりたいと思ってるんです。そのためにはみなさんの力が必要なんです。
僕いつもこう考えているんですけど、完成した料理は生産者も含めての一皿なんです。おいしい野菜がのるからおいしい料理ができるわけで。
こうやってみると、人とのつながりも同じなんです。ふくしまっていうお皿にかっこいい人たちが集まって、それをどんどん発信していけば、かっこいいふくしまに仕上がる。
たくさんの人たちがふくしまの食に魅力を感じて集まってきてくれる。そんな場所を、僕たちが作っていこうじゃありませんか。

と、中田シェフの感動的な言葉でインタビューならぬセッションタイムが締めくくられた後は、参加者のみなさまからも一言ずついただきました。

市役所の職員さんや農機具を販売する方、食育関連のお仕事をしている方など様々な方がお集まりになった中で、それぞれが今やってみたいと考えていることや、食・ふくしまへの思い、今日おいしかったお料理まで、会場のみんなで共有することができました。

そのあとはまた、食事再開。

一生懸命作った料理は見る見るうちになくなって、みなさんお腹いっぱい。

つくった人の真心が伝わる、本当においしい料理でした。
ぜひまたこんなイベントを企画してください。

との言葉をいただき、本当にうれしかったです。

 

 

そして、うれしかったことがもうひとつ。

別のイベント等でお会いし面識のある方も多かったのですが、はじめましての方も来てくださり、参加者さん同士で名刺交換やお話をされていて、良い出会いの場、コミュニケーションの場にもなっていたように思います。中には終了後も話し込んでいる方も。

大野木君も言っていましたが、食事ってただ単に栄養を取るためだけじゃなくて、一緒に食事をすることで話のきっかけになったり、仲良くなることができたり。気軽に会話を交わせる場になってくれますよね。

それを改めて実感するとともに、そんな素敵なイベントにしてくださった参加者のみなさんに、改めて感謝の気持ちです。

 

 

主催したのは県外から来た学生、参加してくださったのは県内の方がほとんどでしたが、今回のイベントのおかげでふくしまの魅力に改めて気づけましたという感想も多く、何よりもうれしい思いです。

イベントに参加してくださったみなさま、運営に協力してくださったみなさまに心より感謝の気持ちでいっぱいです。

チームふくしまプライド。の一員として、これからもふくしまのおいしい食と魅力的な人にたくさん出会い、わたしの感じたものを積極的に発信していけたらな、と思います。

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